| トップ | 情報系 | 研究系 | 雑多系 | 交流系 |
はじめに、そもそもミステリ小説において“密室殺人”とはなんでしょう。 基本的に私は、扉や窓を内側から施錠されている部屋の中には殺人による被害者 のみ存在するという状況と定義しています。どのように殺害したのか?どのよう に密室を構成したのか?この部屋でいったい何が起きたのか?これらの謎を扱う のが“密室殺人”をテーマとしたミステリ小説です。
“密室殺人”は、特に人気のあるテーマです。ミステリ小説での最初の密室は、 エドガー・アラン・ポー氏の『モルグ街の殺人』です。しかし、密室トリックではイズレイル・ザングウィル氏の『ビッグ・ボウの殺人』が発案者です(解からない方はこの二作を読み、違いを確認してください)。これらの作品から数多くの作家 がいろいろな密室を創ってきました。“足跡のない殺人”や“密閉状態からの人 体消失”、“衆人観衆の密室”などの様々なバリエーションが存在しています。
“密室講義”といえば、“不可能犯罪の巨匠”ジョン・ディクスクン・カー氏の『三 つの棺』の中でフェル博士がランポール達の前で講義をしたのが有名です。この 作品で初めて密室の機構(トリック)を分析、体系化をして、その後の作家達はこれに 触発されました。日本では主に江戸川乱歩氏の『類別トリック集成』、山口雅也氏の 『13人目の探偵士』、小森健太朗氏の『ローウェル城の密室』、二階堂黎人氏 の『悪霊の館』などが、ジョン・ディクスクン・カー氏の“密室講義”を発展させ 細分化し独自の理論を公表しています。私の“密室講義”は小森健太朗氏の『ロー ウェル城の密室』と二階堂黎人氏の『悪霊の館』を踏襲しました。
密室を状況により二つに分け定義したもの。これは以下の分類の基本となる。心理的に完全な密室と思われたが、実は密室でなかったものなども、完全な密室に含まれる。
部屋に一切隙間がなく、室内への出入りが不可能なもの。
密室の隙間から犯人以外の凶器や糸、動物や死体などが通りえたもの。
犯人や被害者自身の手によるもの。
犯人や被害者が自動的に発動させるもの。
犯人や被害者が錯覚や欺瞞を利用するもの。
偶然に密室が構成されるもの。
以下の表は、密室構成の前の状況三つと後の状況二つに分け、トリックの方法により分類したものと代表なトリック。
(私自身もさっぱり意味が判りない表です。読み飛ばしてね)
| 犯行前の部屋の状況 | トリックの種類 | 密室が開かれた時、第三者の認識 | トリックの代表例 |
| 完全な密室のとき | 物理的トリックを使用 | 第三者が完全な密室と認知した | 部屋の特殊な形状(動かせられる部屋など)による殺人。 |
| 機械的トリックを使用 | 第三者が完全な密室と認知した | 設定時間にボーガンの矢が発射されるもの。 | |
| 心理的トリックを使用 | 第三者が完全な密室と認知した | 他殺を装う自殺。殺害場所の欺瞞。密室が開かれたとき、気づかれずに殺害する(早業殺人と呼びます)。 | |
| 偶然に起きた出来事 | 第三者が完全な密室と認知した | 他殺のように見える事故死や病死(転落死など)。 | |
| 不完全な密室のとき | 物理的トリックを使用 | 第三者が不完全な密室と認知した | 部屋の隙間から銃弾や矢、岩や動物により殺害。 |
| 機械的トリックを使用 | 第三者が不完全な密室と認知した | 被害者の自らの行動により部屋の隙間から銃弾や矢が自動発射し死に至るもの。 | |
| 心理的トリックを使用 | 第三者が完全な密室と認知した | 被害者が犯人を庇い完全な密室とし、捜査撹乱を狙ったもの。 | |
| 第三者が不完全な密室と認知した | 室外で殺害し切断した被害者(または凶器)を室内に投げ込み、室内で殺害したように見せかけるもの。 | ||
| 偶然に起きた出来事 | 第三者が不完全な密室と認知した | 他殺のように見える事故死や病死(隕石や海水での死など)。 | |
| 部屋に犯人や被害者が入れたとき | 物理的トリックを使用 | 第三者が完全な密室と認知した | 犯人から逃げるため、瀕死の被害者自ら施錠したもの。氷や磁石による施錠。扉や屋根をはずすもの。被害者の上に部屋を作るもの。 |
| 第三者が不完全な密室と認知した | 部屋の隙間から針や糸を使い施錠するもの。紐を使い死体の一部を移動させ消えたように見せかけるもの。 | ||
| 機械的トリックを使用 | 第三者が完全な密室と認知した | 室内にある機械(映写機など)による施錠。動物による施錠。時間がくると施錠(開錠)するメカニズム。 | |
| 第三者が不完全な密室と認知した | 他者のある行動により自動的に施錠。 | ||
| 心理的トリックを使用 | 第三者が完全な密室と認知した | 密室が開かれた後、犯人は発見者に紛れたり、鍵を室内に持ち込む。二つの鍵の入れ替え。共犯者との連携。犯行時刻の錯覚。隠し通路や扉。 | |
| 第三者が不完全な密室と認知した | 共犯者との連携による鍵の受け渡し。 | ||
| 偶然に起きた出来事 | 第三者が完全な密室と認知した | 他殺のように見える事故死や病死(振動により鍵が掛かるなど)。犯人が殺害後、意図せずに密室に成ってしまったもの。 | |
| 第三者が不完全な密室と認知した | 他殺のように見える事故死や病死(隕石や海水での死など)。 |
犯人にとって密室を構成するには多大なリスクがある。それを承知で密室を構成する為の理由またはリターン(利益が当然ある。以下の七つの密室構成理由は、麻耶雄嵩氏の『翼ある闇』にあるものの引用です(つまり、これ以上うかばなかった)。
故に、この作をまだ未読の方はくれぐれも読まないで下さい。
犯人が必然性がなくお遊びで作製したもの。つまり、愉快犯。
犯人が本格ミステリマニアの場合。つまり、ミステリー作家や私みたいなマニアが、職人(マニア)気質が災いして、つい創ってしまったもの。
ある結果をなすために創る密室。つまり、探偵がその場に留まるための密室。