島田荘司論
新本格ミステリーの生みの「島田荘司」の作品から今後のミステリー界を占う評論本格推理小説史に於ける役割
The author 有沢翔治
かつて本格推理小説は「松本清張によって『お化け屋敷』と揶揄されて」きた[1]。このこととトリックの枯渇により、 本格低迷期を迎えたと一般には言われている[2][3]。というのもリアリティを重視する、社会派推理小説とトリックとロジックを重視する、 本格推理小説とでは水と油の関係であった。
しかし島田荘司や綾辻行人、法月綸太郎など所謂「新本格」らが80年代、デビューした。しかも島田荘司『占星術殺人事件』、有栖川有栖『月光ゲーム』 などは「読者への挑戦状」が入って、本格の典型ともいえる作品だ。これによって日本 に於ける新本 格の幕開けとなる。
この作品は大胆不敵なトリックももちろん評価されている。しかしホームズの流れを汲んだ典型的な天才探偵、御手洗の人間性が描かれていることに着目したい。 もちろん古典作品ドイル『三人ガリデブ』のワトソンを気遣う台詞や、『三破風館』の結末でホームズの人間性が出ている。しかし、 これは以前のトリックを再利用するなど評価が低い。またクイーン『中途の家』は天才性が薄く、また葉巻があるから男性がいたという証拠は能力としてない。 それに比べると『占星術殺人事件』は本格と探偵の人間性を兼ね備えた作品といえよう。これらが存分に発揮されている作品が『異邦の騎士』や 『数字錠』(『御手洗潔の挨拶』収録)である。
また、三作目 『死者が飲む水』は本格と社会派の融合として高い評価を得て、また駆逐されたトラベル・ミステリー[3]に新たな発展を与えた。 従来においても森村誠一や西村京太郎など、本 格派と社会派の融合は試みられてきたが、それらは完全に分離していた。『殺しの双曲線』は 母親を殺した大衆に復讐したいからといって、クローズド・サークルにする必要性はない。また『高層の死角』は、発見を遅らせるためで密室殺人にする 必要が薄い。かつて江戸川乱歩は探偵小説は純文学との融合を図らなければならない、と主張したことも付け加えておく[5]。
島田荘司は歌野晶午をデビューさせるなど[6]、新人発掘に尽力した。また本格ミステリーに関しての評論を執筆するなど[7]、 本格ミステリーの発展を促した功績は大きい。しかし人間の奢りをテーマとした『水晶のピラミッド』以降、島田荘司の勢いは衰退する。 例えば『ネジ式ザゼツキー』は横書きにする必要が認められなく、手記から推察すると言う内容は『眩暈』と酷似している。また『水晶のピラミッド』 のように、深いテーマも見られない。作品はもう低迷期に入ってもいいだろう。






